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罪 ~女神エランダ~ 全編

――2008年 春

まだ私はやんちゃな子どもであり、「軍人であれ」という親の意思に反発していた。
外では私と同じくらいの子どもが無邪気に遊び語りあっている。
私はそんな生活に憧れていたのだ。
……その日も、父との言い合いから始まっていた。

『なぜわからん!貴様は軍人としての誇りがないのか?!』
『んなもんないよっ!何で僕だけそんなことしなきゃいけないんだよっ!』
『だまれっ!貴様は私の言うことに従っていればよいのだ!』
『ッ……親父の、ばかやろうっ!』

言い合いの末、私は家を飛び出した。
こんなことはよくあること。いずれ私は家に帰らざるをえなくなる。
この世界は小さな子どもがひとりで生きていけるほど甘くはないのだ。
だから、私は半分諦めながら街をさまよっていた。
そして公園に差し掛かった時――

――私は、女神を見た。

茶色の髪に金色の瞳。
眼鏡の中からは優しそうな表情が浮かんでいる。
小鳥と笑顔で語り合う少女の姿。
それはとても幻想的で……私は一瞬で彼女の虜となった。
これまで何度か公園に足を運んではいるが私は彼女を見たことはない。
おそらくつい最近この街に引っ越してきたのだろう。

「……あなた、鳥は好き?」
気がつけば、彼女が私に近づき訪ねてきた。
「え、あ、そのっ、僕は……」
「ふふっ、ごめんなさい。驚かせてしまったみたいね」
彼女はおそらく私と同年代であろう。それなのに私よりもずっと大人に見えた。

彼女は名を『エランダ・ファフニール』と言った。
予想通り、彼女は先日こちらに引っ越してきたばかりだったらしい。
街を散歩していた最中にこの公園にたどりつき、大好きな鳥と戯れていたらしい。

「じゃあ私。そろそろ帰らないと」
ベンチに座り、とめとない話をした後。彼女はそう言って立ち上がった。
「ぁ……そうだよね。もう帰らないと」
あの、窮屈で居心地の悪い家に帰らないとならない。
わかっていたはずなのに、この出会いが終わってしまうことが悲しくなった。
「ねぇレーゼマン君。また、会えるかな?」
そんな私の表情を見て感じ取ったのか、彼女はやさしい笑顔で聞いてきた。
――その笑顔は優しくて、神秘的で……温かかった。
「う、うん!今度……いや明日!明日またこの時間にここで会おう!約束だよ!」
「ふふっ、うん、約束」
彼女は笑いながら小指を差し出す。私も恐る恐る出すと彼女は指をからめた。
「ゆーびきーりげんまんうっそついたらはりせんぼんのーます。ゆーびきった!」
指を離すとくすくす笑いながら彼女は去っていった。
これが、私とエランダの初めての出会いである。


それから、私は何度もエランダに会った。
父親に課せられた厳しい訓練の合間を縫って会いにいった。
私が公園につくと、きまって彼女はすでにベンチに座っていた。
――楽しかった。それまで私は友達というものを持ったことはなかった。
時が流れるにつれ、彼女は私のことを『レーゼ』と呼ぶようになった。
いつしか私と彼女は友達という枠を超えた関係になっていたのだった。


――2010年
あれから2年の月日が流れた。
相変わらず父親の訓練は厳しかったが、いくらか慣れてきていた。
特に銃については思うところがあったらしく、積極的に覚えさせていた。
私はそんな父親をうんざり思いながらもエランダと会えることを考えれば苦にはならなかった。
それに明日は……特別な日なのだから。

「父上、明日休暇をいただきたいのですが」
突然そう訪ねた私を訝しげに見つめる父。
これまで、直接休暇を申し出たことは初めてであったからだ。
「休暇?……ふむ。最近は逃げることなく訓練に打ち込んでいたからな。よかろう、許可する」
「……あ、ありがとうございますっ!」
何事もなく受け入れられ、私はつい大声で返事をしてしまった。
「だが気をつけておけ。最近妙な輩がうろついているようだからな」
「妙な輩?」
「うむ、おそらく反政府ゲリラだろう。どこで襲われるかわからんのでな、注意することだ」
そんな父の言葉を、私は話半分に聞いていた。
――思えば、これこそが運命の分かれ道だったのかもしれない。
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